安静時のバイタルデータで転倒リスクを検知、健康寿命延伸に貢献

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KEPPLE編集部


介護施設向けに転倒リスク可視化システムを開発するRehabilitation3.0株式会社が、第三者割当増資による資金調達の実施を明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、池田泉州キャピタル、QXLV(クオンタムリープベンチャーズ)、その他個人投資家。

今回の資金調達により、プロダクトの正式ローンチ後の導入拡大に向けた人材採用を強化する。

睡眠時バイタルから転倒リスクの高い高齢者を可視化

同社が開発を進めているのが「SAA(Sleep Activity Assessment)」と呼ばれるシステムだ。センサーから取得した介護施設入居者の睡眠時のバイタルデータを活用し、その日の体調にあった最適な運動プログラムを介護施設の担当者に提案する。

SAAイメージ
バイタルデータを基に、独自開発のAIが入居者の運動能力や認知能力を推定する。認知能力の低下や転倒リスクのある高齢者を可視化することで、施設における見守り業務の負担を軽減する。

医療・介護施設向けアプリとしての正式ローンチは2024年4月を予定。医療施設での実証実験は2020年1月から3度にわたって実施した。積水化学工業社製の見守りセンサー「アンシエル」と組み合わせた医療介護施設での実証検証も進めている。

今後は、安静時のバイタルデータを活用して健康状態を推定するAI技術を軸に、医療・介護以外にもさまざまな分野での事業展開を進める計画だ。

今回の資金調達に際して、代表取締役 増田 浩和氏に今後の展望などについて詳しく話を伺った。

作業療法士のノウハウをシステム化

―― SAAが求められる背景について教えてください。

増田氏:人々の体調は毎日変化します。体調に合わせた健康増進法は、120万通り以上あると言われているのです。医療・介護施設において、患者の健康評価を精度高く実施して最適な提案をするには、マンツーマンで対応する必要があるほか、時間や場所の制限も生じます。

50床ほどある施設であれば、1日に30件程度は高齢者の怪我につながる可能性のあるヒヤリハットが起こります。実際に転倒が起きるのはそのうち数件です。ところが、少しでも転倒の可能性があればすべてのヒヤリハットを確認する必要があります。

また、センサーを導入すれば、夜間の人員配置を2割削減してもよいという規制緩和がありました。一方、夜間に高齢者が少し動くだけでセンサーが反応してアラートが鳴るので、担当者はそのすべてを回らなければいけない。結果的に人手不足解消のための規制緩和が機能していない現状です。

我々が研究を重ねてきたのは、安静時のバイタルデータについてです。SAAは睡眠時のデータを分析することで高齢者の運動能力や認知能力を推定し、その日に転倒リスクの高い高齢者の可視化や最適な介護方法の提案をします。ハイリスクな人だけを見守ることもできるので人件費の削減効果も期待できます。

SAAイメージ

スタートアップスカウト

―― 増田さんは、Rehabilitation3.0を設立する前に別の会社を起業されていますね。

2004年に作業療法士の資格を取得しました。祖母に育てられたことで、祖母に恩返ししたいと思ったことがきっかけです。

作業療法士として病棟に勤務する中で、症状が改善して退院した患者が、転倒などの要因でまた入院してしまう様子を何度も目にしました。人の健康状態は年を重ねるごとに衰えていきます。骨折した患者が退院後に在宅で療養しても、高齢であるためにうまくいかないこともあるんです。

そこで、勤めていた医療法人内で在宅医療部を立ち上げ、8年ほど責任者として部を牽引しました。その中で、自分自身が会社を興したいという気持ちも芽生えて最初の起業をし、当初は電子カルテの導入を支援していました。

―― どのようなきっかけで、SAAの事業を着想したのでしょうか?

ある時、自分は患者の寝返りや立ち上がりの動作を見るだけで、その人の運動能力や認知能力がある程度わかることに気づきました。これは私だけの能力ではなく、相応に経験を積んだ作業療法士に共通するようでした。

つまり、私たちの頭の中には、患者に合わせた最適な介護方法がインプットされているんです。AIを活用して、これらの情報を誰でも取り出して活用できればと思いました。

そこから、展示会でパラマウントベッドのマットセンサーを体感したことをきっかけに事業アイデアが浮かび、臨床経験に基づくAIシステムの構想をすぐに作りました。その後運がいいことにNTTドコモとの共同研究の機会もあり、しっかりと事業化すべくRehabilitation3.0を設立しました。

健康推定を軸に各分野へ展開

―― 資金調達の背景や使途について教えてください。

今回ご出資いただいた池田泉州キャピタル常務取締役の辰己さん、投資部長の武川さんとは、以前からの知り合いです。当社が大阪市立大学のアクセラレーションプログラムに採択された際に出会い、その後もいろいろと相談に乗っていただきました。弊社ソリューションは、「喫緊の社会課題である健康寿命延伸を達成できる!」と高く評価いただき今回ご出資いただくに至りました。

また、QXLV代表パートナーの諏訪さんは、知り合いからの紹介で出会いました。お会いした際はプロダクトの作りこみに甘い部分もあった中で、当社の技術や解決する課題に対して高くご評価いただいたんです。こうしたVCに伴走いただけることになり、心強く感じています。

調達資金は、今後の導入拡大を見据えた人材採用や、各メーカーが開発するセンサーとSAAの連携強化に充当する予定です。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

50床以上の病床を持ち、見守り業務がひっ迫しているような施設を主なターゲットとして、今年の6月までにまずは5施設でプロダクトを導入いただくことが目標です。2025年の夏には、30施設程度にまで拡大していきます。東京や関西、九州のほかにも、介護DXに注力する都市へ積極的に展開予定です。

今後の展望
また、健康推定を行う当社の技術には、さまざまな活用用途があります。健康飲料やサプリメントの効果測定、ドライバーの健康管理による事故削減などもその一つです。技術の土台を活かし、セグメントを絞って事業者と連携することで、市場に受け入れられる製品を生み出していきたいと思います。


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