資産形成をもっと身近に、証券サービス「Bloomo」が招待制のサービス提供を開始

資産形成をもっと身近に、証券サービス「Bloomo」が招待制のサービス提供を開始

イノベーションの設計図

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KEPPLE編集部

新NISA制度の開始で投資の世界がますます身近に──。

2019年に「老後2000万円問題」が世に広がり、個人投資家の資産形成意識が高まっている。

新NISA制度の開始で、個人の資産形成意欲はさらに後押しされた。書店で経済雑誌を見れば、どの雑誌も新NISAを前面に押し出していることからもその注目度の高さがうかがえる。

つみたてNISA、一般NISAの区別がなくなり一本化されるだけではない。投資上限金額の拡大や非課税期間が無制限化されるなど、その利用メリットから、これまで投資に興味のなかった層が関心を示すきっかけとなっている。

一方で、金融庁の調査によれば、投資未経験者が投資を行わない理由として余裕資金の不足や資産運用に関する知識不足、購入・保有への不安が上位にあがっている。一般に広く資産形成が普及するには、まだ課題も山積みだ。

NISA制度の拡充が投資の世界への興味を刺激する中、個人投資家がより効率的に資産を形成できるよう支援する新しいプレイヤーも現れている。その代表例が、証券サービス「Bloomo」の開発を進めるブルーモ証券だ。

長期資産形成を支援するスマホ証券

同社は2022年6月に設立。創業1年後の2023年6月には、第1種金融商品取引業者の登録を完了し、個別株を取り扱う独立系証券会社として歩み始めた。

同社が開発するBloomoは、長期資産形成を支援するモバイルアプリだ。Bloomo上で投資できる対象は米国株や海外ETFとなっている。

アプリの正式リリースはこの春を予定。2月には、ウェイトリスト登録者向けに招待制でサービスの提供を開始した。

2023年4月には、メガバンク3行やVCからシードラウンドで8億円の資金調達を実施している。早期にユーザーに価値提供すべく、プロダクトの開発を急ぐ。

理想のポートフォリオに合わせた売買を自動化

同社は、長期投資のUX最適化を重視している。こうしたBloomoの考えが現れる特徴の一つが、先に理想の資産配分を決めてから入金する「ポートフォリオ投資機能」だ。

投資したい銘柄と保有比率を目標ポートフォリオとして指定することで、必要な両替や売買をBloomoが代行する。S&P500指数に連動するETFに30%、Apple株に20%、といった具合に保有比率を指定する形だ。

プロダクトイメージ

画像:ブルーモ証券会社紹介資料より掲載


ネット証券で海外株式に投資をする際との違いは、Bloomoでは目標比率をもとに0.0001株単位から株式を購入できる点だ。同社代表の中村氏はこう話す。

「従来のネット証券では、1株単位で購入する株数を指定し、現在の株価と為替レートを掛けた金額だけ買い付けをします。ちょうど3万円分だけ株式を購入するようなことはできません」

「また、理想とするポートフォリオがあっても、株価の変動によりポートフォリオの比率は日々ずれていくのです。日本円で0.0001株単位で株式の買い付けできることに加え、ユーザーが理想とするポートフォリオ比率に必要な買付額を自動計算して投資ができることで、少額から自分だけの分散したポートフォリオで投資が始められます」(中村氏)

投資の過程で他に買いたい銘柄がでてきたり、保有銘柄の比率を増減させたりしたい場合には、投資比率を変更して簡単にリバランスを実行できる。

プロダクトイメージ

自身のポートフォリオを確認し、リバランスまで実行できる(画像:ブルーモ証券提供)


銘柄の売買に関する手数料は発生しない。預り残高に対する年率0.55%の手数料をBloomoが受け取る形だ。

投資対象として魅力的に映る米国株

Bloomoが支援するのは個人投資家のグローバル投資だ。この数年、投資経験の少ない若年層に投資が広がったことに加え、個人投資家の資金の多くは海外株に流入している。

日経平均株価は、2024年に入ってからバブル経済以来の高値圏で推移するなど注目を集めている。「アベノミクス」が叫ばれた2013年から3倍以上に上昇したものの、過去30年で見れば横ばいだ。

対してS&P500指数は、ITバブル崩壊や同時多発テロ、リーマンショックなどによる一時的な大幅下落もありつつ、過去30年で約10倍にまで成長を遂げた。

S&P500と日経平均の比較

画像:ブルーモ証券公式HPより掲載


X(旧:Twitter)で米国株投資について発信するインフルエンサーの存在もあり、彼らの発言やポートフォリオを参考に資産形成する個人投資家は多い。

他の投資家を参考にして情報収集に活かせる「コミュニティ機能」もBloomoの特徴の一つだ。他のユーザーが公開したポートフォリオをコピーし、自分の資金に合わせて株式を購入できるようにした。

「投資初心者がポートフォリオを自分で組むことは容易ではありません。我々が掲げる『投資をみんなのものに』というミッションに基づいて考えたアイデアが、他の投資家のポートフォリオをコピーする機能です」(中村氏)

こうした機能で、ユーザーの金融リテラシー向上にも貢献する。投資や資産形成に関する情報があふれる社会で投資へのハードルがいまだに高いのは、ユーザーによる投資の実践が難しいためだと中村氏は話す。

プロダクトイメージ

画像:ブルーモ証券会社紹介資料より掲載


単純に金融に関するコンテンツをBloomo上で用意するのではなく、投資実践の入り口としてポートフォリオのコピー機能を設けた。他のユーザーの行動から、自然と金融への学びを得られるのではないかとの考えだ。

既存証券サービスの操作性にはハードルがある

「金融リテラシーがあることと、既存証券サービスを使いこなせることは別次元の問題」。自身が株式投資を始めたタイミングを振り返って、中村氏はそのように話す。

中村氏は、財務省で税務調査や国際金融業務に従事した経歴を持つ。その後スタンフォード大学にMBA留学し、帰国後はマッキンゼーで金融機関の新規事業戦略に携わった。

金融領域の専門性を持つ中村氏が、自身で資産運用を開始した際に感じた課題の一つが「既存証券サービスの操作性」だ。

「当時ネット証券で自分の好きなポートフォリオを組んで投資しようと思ったら、Web上で細かな操作が必要で難しく断念し、結局投資信託だけで投資を始めました。結果的に金融資産は増えたのですが、投資を始めてからサービスに触れることはほとんどなく、投資を通じて知識が増えることはありませんでした」

中村氏の写真

ブルーモ証券代表取締役社長の中村 仁 氏(写真:同社提供)


「こうしたきっかけから気づいたのは、これからの資産形成層に金融リテラシーの向上が求められる一方で、これらの課題を解決するプレイヤーがいないことです。ポートフォリオを簡単に管理して投資し、徐々に金融知識を身につけることサポートできるような仕組みがあればと、Bloomoを発想しました」(中村氏)

同社は、Bloomoでネット証券のリプレイスを目指しているわけではない。短期売買や、信用取引などのリスクの高い取引をしたいユーザーはネット証券が適していると中村氏は考える。

自分の運用方針や目的に合わせて商品を提案・運用するロボアドバイザーとは、自分の買いたい商品をポートフォリオに組み込め、運用の自由度が高い点で異なる。運用を完全にお任せしたい場合にはロボアドバイザーを、ポートフォリオを自分で管理したい投資家にはBloomoが適しているというのが中村氏の考えだ。

ユーザー体験を何よりも重視

現時点ではまだ一般に利用可能なアプリではないが、ブルーモ証券の社内メンバーはBloomoによる株式の売買を実際に行っている。

ポートフォリオを自分で作成して商品を売買する斬新な取引が楽しいという意見や、今まで投資対象としてみていなかった商品をポートフォリオに組み込むなど、新たな投資体験につながっているとの手ごたえだ。

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アプリ上で市場情報や人気のあるユーザーのポートフォリオを見ることができる(画像:ブルーモ証券提供)


一方で、モバイルアプリならではの難しさもある。エンジニアの獲得競争が激化する中、投資アプリとしてのUI / UXにとことんこだわった開発を進めるための人材採用に注力している。

「投資アプリならではの開発の難しさもあります。0.0001株単位での注文を可能にするなど、ユーザー体験を重視するほどバックエンドも含めた開発が大変で、証券会社という性質上処理間違いは許されません」(中村氏)

当初の想定とは異なる発見もあった。社内ローンチ時点では、ユーザー登録後にまずはゼロからポートフォリオを作成する流れにしていたが、投資初心者には思っていた以上にハードルが高かったという。こうした発見もあり、Bloomoが用意する複数のポートフォリオからコピーして運用開始できるなど、アプリダウンロード時点から投資初心者が戸惑わない設計に注力している。

当面は、金融機関が年間取引報告書を作成・源泉徴収納税する特定口座のみに対応する。NISA口座へは、2024年内を目標に対応する予定だ。

千載一遇のチャンスを無駄にはしない

ブルーモ証券は、「新しいデジタル銀行をつくる」ことを長期ビジョンに掲げる。投資に限らず、金融に関する体験自体を向上させたい考えだ。

「まずは投資を入り口に資産を預かり、周辺の課題解決にも取り組みます。その先には、Bloomoで保有する株を売却しなくとも借り入れで資金を作ったり、給与受け取り用にプリペイドカードやデビットカードを提供し、余ったお金を投資に回すような資金移動の仕組みも検討しています」

ブルーモ証券はとにかく「ユーザーが資産形成したい」と思える体験にこだわる。「幸いなことに優秀なエンジニアが揃っている、資金もメンバーも揃う機会は中々ない」中村氏は続けてこう話す。

「投資領域は、金融商品取引業のライセンスの取得や開発チームを集めるのも大変。個別株を取り扱うスタートアップとして、みんながみんな打席に立てるわけではないんです。この機会を無駄にせず、本当に価値あるものを届けることが会社としての責務だと思っています」(中村氏)

投資に興味はあるが、どこから始めていいかわからないという人は多い。しかし、Bloomoが提供する「目標ポートフォリオ」機能や少額からでも始められる柔軟な取引方法は、そのような人々の投資へのハードルを下げるだろう。

実際に筆者もBloomoをインストールして触ってみた。特に印象的だったのが他のユーザーのポートフォリオを参考にできる点だ。評価損益や週間比も確認でき、運用成績の高いユーザーのポートフォリオを眺める楽しみがある。自分と似た運用方針のユーザーを探したり、全く違う考えを持つユーザーを参考にするのも面白そうだ。

プロダクトイメージ

ユーザープロフィールでは自己紹介や運用方針に関するコメントを確認できる(画像:ブルーモ証券提供)


難解な金融用語も極力少なくなっている。銘柄詳細の画面にはその企業の概要やビジネスモデルに加え、時価総額に配当利回り・アナリスト評価が表示されており、投資初心者でも抵抗感なく銘柄情報を調べることができるだろう。(もちろん、より詳細な情報も確認可能だ。)ETFの場合には資産残高や運用コスト、組み込み銘柄の比率などが表示されている。

Bloomoの正式リリースは2024年5月頃を予定している。Bloomoのような手軽で直感的なアプリの登場で、これまで投資が遠い存在だと感じていた人々もその世界に一歩踏み出せるようになるのか、今後の反響に注目したい。

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