電力事業手掛けるNature、独自のエネルギーマネジメントプラットフォーム構築へ

電力事業手掛けるNature、独自のエネルギーマネジメントプラットフォーム構築へ

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KEPPLE編集部


家電を操作できるスマートリモコンの開発・販売やエネルギーマネジメント事業を展開するNature株式会社が、第三者割当増資による約10.2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回のラウンドでの引受先は、東京ガス、環境エネルギー投資、KDDI Green Partners Fund、ダイキン工業、ENEOSイノベーションパートナーズ、HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND、三菱UFJキャピタル、横浜キャピタルの8社。

今回の資金調達により、同社独自のエネルギーマネジメントプラットフォーム「Nature DER Platform」の構築を目指す。

IoTを活用してエネルギーマネジメントへ展開

Natureは家電をスマートフォンで操作できるスマートリモコン「Nature Remo」シリーズの開発・販売を行う。赤外線リモコンを備えた家電であればメーカーや型番・年式に関係なく連携でき、センサーを用いた自動制御も可能だ。累計販売台数は60万台を超える。

Nature Remoイメージ
コンセントに挿すだけで導入できるスマホHEMS※「Nature Remo E」も提供。電力消費や料金目安を可視化するだけでなく、Nature Remoシリーズと連携することで電力使用量に合わせた家電の自動制御を実現する。

電力小売事業者向けに、同社製品を活用して電力需要量を供給量に合わせるデマンドレスポンスの導入や運用も支援している。この数年、スマートホームを足がかりにエネルギーマネジメント事業への展開を本格化し、電力需要を調整する仕組みの構築に取り組んでいる。

今回の資金調達に際して、代表取締役 塩出 晴海氏に、今後の展望などについて詳しく話を伺った。

※HEMS:Home Energy Management System。家庭で使うエネルギーを節約するための管理システム。

再エネ普及で重要な役割を果たす「調整力」

―― 電気の脱炭素化において御社が担う役割とは?

日本は2030年までに温室効果ガスを半減させ、太陽光や風力などの再生可能エネルギーの比率を増やすことを目標としています。しかし、具体的な実現方法は明確に示されていません。

エネルギー産業は規制が厳しく、政治と経済の協力が不可欠です。ヨーロッパの国々では再エネや関連技術の普及を後押しするような政策があり、ビジネスが育ちやすい環境が整っています。一方日本では、環境整備が遅れているように感じます。

発電に関しては、すでに多くのプレーヤーが存在しています。私たちは、エネルギーの需要と供給のバランスを調整するアプローチをとっているのです。

電気は基本的には貯蔵することができず、作りすぎても無駄になってしまいます。そのため、電気の需要を柔軟にコントロールする「調整力」を提供する仕組みが、再生可能エネルギーが今後普及するうえで必要なインフラになると考えています。

―― 起業することは以前から決めていたのでしょうか?

塩出氏:父が起業家でした。幼い頃にゲーム開発の様子を身近で見ていた経験から、将来は自らも起業したいという思いが自然と芽生えたんだと思います。同時にプログラミングに興味を持ち、コンピューターに関する知識を積極的に学びました。

大学院卒業後には、国内外での新規事業立ち上げの経験を積むため、三井物産に入社しました。当初から興味を持っていたIoTの先駆けであるユビキタス事業部に配属希望を出していましたが、残念ながらその部署は入社してすぐになくなってしまいました。

まだ時代が追いついていなかったのだと思います。当時はまだインターネット通信のためのハードウェアの価格などが高く、急速に普及していくための環境が整っていませんでした。

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―― それでも、IoTの分野で起業されたのですね。

ユビキタス事業部がなくなってから、起業家としての自分のテーマを再び考え直したことがあります。

その際に感じたことは、ビジネスが成立するにはその市場の需要がなければ、自分一人がどれだけ頑張ったとしても成功しないということです。

そこで、将来は市場が大きく成長する可能性がある領域で、自分の感性に合った事業で挑戦したいと考えるようになりました。それを考える中でたどり着いたのが、クリーンテックです。

ユビキタス事業部がなくなった後は、三井物産で火力発電関連の案件に携わっていました。電力業界の構造や課題感について良く知れた一方で、自然に囲まれた環境で育った経験もあり、自分が力を入れて取り組みたいのはクリーンテックなんだとあらためて思ったんです。

電力使用量を確認している様子
最終的にたどり着いたのが「電力の調整力」というテーマです。そこにたどり着くための技術としてIoTが必要だということに気づき、創業当初はスマートリモコンの開発や販売から事業展開を開始しました。

エネルギーマネジメントプラットフォーム構築へ

――調達資金の使途について教えてください。

調達資金は、「Nature DER Platform」の構築を含めた事業を拡大するために充当する予定です。発電や蓄電ができる太陽光発電システムや蓄電池、電気自動車、エネファームなどのリソースは、需要家が各地に分散して所有しています。Nature DER Platformを活用することでこれらの資源を統合し、最適制御することが目標です。今後はこうした仕組みが世の中に必要となってくるはずです。

当社のようなスタートアップがこうした仕組みの構築を単独で実現するには、かなりの苦労が伴います。今回株主となっていただいた事業会社と連携することで、Nature Remoシリーズの普及拡大や新プロダクトの開発を進めていきます。

―― 今後の長期的な展望を教えてください。

当社は創業以来、IoTの機器に関連した事業を手掛けています。機器のラインナップをさらに拡充し、Nature DER Platformをしっかりと立ち上げていくことが今後の事業拡大において非常に重要です。

将来的には、アジア太平洋地域への進出を見据えています。当社のメンバーは国際色豊かで、フランス、イギリス、カナダ、中国の出身者や海外在住経験のあるメンバーも多くいるなど、海外に対する強い思い入れもあります。

当社が重要だと考えているのは、需要に合わせて調整可能な電力リソースをどれだけ増やせるかということです。我々がコントロールできるキャパシティの目安として、2〜3年後には中規模な火力発電所レベル、将来的には原発1基分の発電力相当以上の調整ができるよう取り組んでいきます。


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