スタートアップが導く食のサステナビリティ、フードテック市場の動向

スタートアップが導く食のサステナビリティ、フードテック市場の動向

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written by

高 実那美


本記事では、株式会社ケップルのアナリストが作成したレポート「【独自調査】農業・食品分野でイノベーションを起こすスタートアップ(フードテック編)」の内容を基に、近年のフードテック領域の動向を解説する。

なお、本記事では、当レポートで解説されている12種類のカテゴリーのうち、3つのカテゴリーを抜粋する。

KEPPLE REPORTをダウンロードすることで以下の情報をご覧いただけます。

・アナリストによる12種類のカテゴリー別フードテック産業の詳細な解説
・国内外のスタートアップ135社を分類したカオスマップ
・国内外のスタートアップ135社の詳細な情報


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Index

  • フードテック市場の動向
  • カテゴリー別のフードテック市場の動向
    • ①フードロス
    • ②植物由来肉
    • ③昆虫食
  • おわりに

フードテック市場の動向

近年、フードテック・アグリテック領域は食料生産の効率化や環境問題の解決に貢献することが見込まれていることから、世界的に注目されている。

フードテックとはFood(フード)とTechnology(技術)を融合させた造語で、最新のITやテクノロジーを駆使して、新たな食品や調理手法を生み出す新しいビジネスモデルである。具体的な例として、植物由来の成分を用いた代替肉、細胞培養によって製造される魚肉、食品の保存技術などが挙げられる。

世界のフードテック市場規模は、2022年に2600億ドルと評価され、2028年までに3600億ドルに達するとの予測がある※1。また、アグリテック市場も食料危機や環境問題などに関する人々の意識向上により、世界中で盛り上がりを見せている。世界の市場規模は、2022年に245億ドルと評価され、2028年には492億ドルに達し、成長率は12%を超える見込みである※2

一方で、日本に関しては、アグリテックとフードテックを合わせた市場規模は2021年で718億円、2030年で2112億円まで成長すると予測されている※3

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フードテックが注目される背景には、世界的な人口増加に伴う食料不足や食の安全性向上、多様な食習慣への対応、持続可能な食の実現といった課題を解決しうる手段として期待されている点にある。

フードテックの分野で先行しているのは米国であり、米国では環境問題や健康への関心の高まりから植物由来肉をはじめとした代替食品、食品保存技術など様々な分野でスタートアップが誕生している。

また、イスラエルでは、国土の半分以上が砂漠地帯であることもあり、農業と食料生産の技術開発に力を注いでおり、代替食品のスタートアップ企業が盛んだ。

一方で、国内は海外と比較してフードテック・アグリテック領域では遅れをとっている。が、昨今ではAIなどの先端技術を活用した「スマート農場」を目指して政府が支援を行うなど、取り組みが強化されている。

カテゴリー別のフードテック市場の動向

KEPPLE REPORTでは、フードテック産業を12のカテゴリーに分類して解説している。それぞれ、フードロス、食品保存技術、植物由来肉、培養肉、植物由来魚介類、培養魚介類、陸上養殖、代替タンパク質、代替卵、代替砂糖、昆虫食、3Dフードプリントである。

本記事では、これらのカテゴリーの中から抜粋して、フードロス、植物由来肉、昆虫食を中心に解説する。

①フードロス

このカテゴリーでは、フードロス削減のための食品アップサイクル技術の開発に取り組む企業を含めている。アップサイクルとは、廃棄予定のものを加工し、素材や形などの特徴を生かし新しい製品へとアップグレードする手法である。リサイクルは製品を一度原料に戻す作業が必要なためエネルギーコストが高くなるのと比較して、より環境負荷が少ないアップサイクルが注目されている。

国内スタートアップのASTRA FOOD PLANは、食品の乾燥と殺菌を同時に行い、食材の風味の劣化と酸化を抑えた食品粉末の製造が可能な装置「過熱蒸煎機」を開発している。

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海外ではシンガポールで、食品メーカーの製造工程で発生する使用済み穀物を食品容器へアップサイクルする企業や、米国で廃棄される農作物を布製品に活用される繊維にアップサイクルする企業も存在する。

なお、KEPPLE REPORTでは、フードロス削減に向けたアップサイクルを行う企業を国内6社、海外6社に分類してカオスマップを作成している。

②植物由来肉

このカテゴリーでは、植物由来成分を使用して製造された肉を模した食材である植物由来肉を解説する。

植物由来肉は、健康志向の高まりや環境への配慮などの観点から注目を集めている分野である。畜産業では家畜由来の排泄物やメタンガスといった環境問題があり、また宗教上の理由から肉を口にできない人々に対応する存在として植物由来肉が期待されている。

一方で、植物由来肉には製造コストの高さ、豆類などの植物をベースにしているため肉とは異なった味わいになってしまう点が課題だ。さらに、近年の物価の高騰や経済の悪化により、割高でも植物由来肉を買う消費行動が減少しつつある。

この分野を牽引するのが米国の上場企業であり、中にはユニコーン企業も存在する。企業によってエンドウ豆たんぱく質や、大豆たんぱく質を活用するなどさまざまな製品が製造されている。

国内でも有望なスタートアップが多く、和牛風味の植物由来肉など日本独自の製品も誕生している。他にも、大豆特有の臭み成分を取り除いた植物肉を開発し、ハンバーガーチェーンのバーガーに採用されるなど味にこだわった企業も存在する。

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なお、KEPPLE REPORTでは植物由来肉を製造する企業を国内7社、海外6社(うち上場企業1社)に分類している。

③昆虫食

昆虫食は製造する上での環境負荷が少なく、肉に代わる新たなタンパク源となり、食料危機への対策に繋がるとして多くの投資家から注目され、スタートアップが誕生している。

一方で、甲殻類と同様にアレルギー反応が起こる可能性があるといった点や、見た目への嫌悪感が強く普及が難しいといった点が課題だ。

国内では、徳島大学発スタートアップにてコオロギの自動飼育システムやゲノム編集技術を開発し、コオロギパウダーを配合したプロテインバーが製造されている。

国内には他にカイコパウダーを活用した製品やタガメエキスを配合したサイダーを開発するスタートアップが存在する。

海外では、畜産や水産養殖、食用にミルワームパウダーやエキスを配合した商品を開発している、フランス企業がユニコーンとなっている。食用だけでなく、家畜や魚の飼料など幅広い用途に活用できるのが昆虫食の強みである。

なお、KEPPLE REPORTでは昆虫食の開発に取り組む企業を国内10社、海外9社に分類している。

おわりに

環境や動物に配慮した持続可能な農業や食への需要が世界的に高まっていることや、多様な食習慣を求める人が増えてきていることから、長い目で見ると今後も様々なフードテックを提供するスタートアップが誕生し、成長していくだろう。

しかし、フードテックは成長段階であり市場規模が大きくはなく、近年の物価高や景気悪化による高価な代替肉の消費行動が抑制されている点、国内では制度面が不十分である点が課題としてある。

今後、日本でフードテックが普及するためには、既存の食品と比較してのコスト競争力と国の制度による安全の保証が鍵になると考える。

KEPPLE REPORTでは、今回触れた3つのカテゴリーの他に、12のカテゴリー別の詳細な解説、および国内外のスタートアップ135社を調査し、カオスマップとしてまとめている。より詳細なスタートアップ情報に関心のある読者はぜひご覧いただきたい。

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新卒で全日本空輸株式会社に入社し、主にマーケティング&セールスや国際線の収入策定に従事。INSEADにてMBA取得後、シンガポールのコンサルティング会社にて、航空業界を対象に戦略策定やデューディリジェンスを行ったのち、2023年ケップルに参画。主に海外スタートアップと日本企業の提携促進や新規事業立ち上げに携わるほか、KEPPLEメディアやKEPPLEDBへの独自コンテンツの企画、発信も行う。

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